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吼える月
第24章 残像
「テオン、該当燈篭の場所は何処だ!?」
「手前から、2、4、10、13、16、22、23、25、28、31!! うわああああ、気持ち悪い、なにこれなにこれ、なにこの化け物!!」
「俺にしがみついてろっ!!」
餓鬼の姿を見ても狼狽せず、恐怖するテオンに髪を引っ張られても動じることなく。
目を瞑ったサクの身体から放たれる水色の光は――、
「きぇぇぇぇぇぇっ!!」
流れてくる餓鬼が一斉にサクに襲いかかる直前にて、壁のようにして下から水を巻き上げ、該当する10個の燈篭を覆い、同時にそれらの火を消した。
火が消えたという確認が出来たのは、僅か一瞬――。
途端景色が大きく揺らぎ、不安定になった足場に、思わずサクがよろけるように片膝をついた時。
……光景は一変した。
「え、えええ、ここどこ!? 僕知らないよ、ねぇまた新たな術の中!? 術破りに成功したと喜んでいいの、それとも悲しんだ方がいいの!?」
輝く素材で作られた青い壁と廊。
廊は螺旋を描くように延々と、緩やかに下降していた。
部屋も横道も装飾もなく、ただひたすら同じ道幅の廊が続いている。
「地下室なんてないよ青龍殿は!! なんで下に向かっているの!?」
サクは思い出す。
術とはいえ、何度も何度も巡らされた罠だらけの光景で、自分の足は確かに"下っている"ような、足場の不安定さを感じていたことに。
始めから"虚構"の風景を与えられ、同時に誘導されていたとしたら?
サクは目を細めて言った。
「……なぁテオン。俺達は間違っていたのかも知れない」
「え?」
「青龍殿は海に浮かぶ屋敷ではなく、海の中にある屋敷なんだ」
「そ、そんな!? だって、僕ここで生活を……っ」
「それは、偽装だ」
「偽装!? なんで、どうして!?」
「俺らのような侵入者を防ぐため。
そして様々な罠を乗り越えて、あらかじめ定められていた"試験"に合格するのが、話し合いの場につくか否かを決める最低条件なんだろう。
奴らはきっとこの下で待っている」
「奴らって!?」
「お前と俺が会いたいと思っていた、この屋敷の主達だ。
これが、忍び込んだ青龍殿に、"誰も居なかった"理由でもある」
サクの顔は険しかった。