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吼える月
第25章 出現
 



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 蒼陵国の神獣青龍を祀る青龍殿に乗り込んだ…玄武の武神将サクと、蒼陵国祠官に廃嫡された息子テオン――。

 青龍殿の扉は容易く開いたが、中には住人はおろか、連行されたはずの蒼陵国の大人達もいなかった。

 皇主が住まう中央にしかないはずの輝硬石でできた特殊な床。誰もいないのに感じる人の気配。

 神獣の力をもった"仲間"を含めて、あらゆる侵入者を駆除しようとする罠が延々と続く屋敷に閉じ込められてしまったふたりだったが、かけられていた目眩ましの術を突破する。

 青龍殿の真実の形は、海に浮かぶものではなく海の中に沈められているものだと看破した玄武の武神将は、頑なまでに"守り"に入る青龍殿の住人の姿勢に緊々としたものを感じながら、疑問を抱いた。

 戦意を持てば獰猛になる勇敢な青龍の武神将が、ここまで守りを固めて居場所を密やかにしないといけないのは、攻撃できない…なにかからの攻勢を怖れているのではないかと。

 青龍の武神将、ジウ=チンロン。

 彼がここまで外部からの侵入に備えているのは、彼が狂ったせいなのか。
それとも、狂わないといけないほどに、なにかに脅かされているのか。

 道なりにそって下るにつれ、海の渦が消える際に聞こえた……、あの不気味な音に似た音がふたりの耳に届き、ふたりは顔を見合わせた。


 一方、新生玄武が故意的にサクとの交信を遮断した理由は、黒陵の姫ユウナが対峙する、皇主の三男スンユに宿る未知数な力の存在と、神獣への敵対心を感知してのことだった。

 ユウナと【海吾】の集団が必死に介抱したスンユは、リュカとゲイが求めていた「女神ジョウガの箱」を開く鍵を求め、「青龍の鍵」を持つとするジウの隠し子シバを威圧する。


 リュカと同じ顔と同じ目的を持ち、リュカしか知り得ない情報を持ちながらも、リュカを排除しようとしているスンユの意図が見えず、ユウナは不安を感じていた――。



  ~倭陵国史~


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