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吼える月
第25章 出現
スンユは、シバに超然とした眼差しを向けた。
「きっと聡いシバならこう考えているだろう。青龍の武神将であるジウが集めたこの国の多くの大人達が消えたのは、どこかに連れられて密やかに船を作っていたからなのではないかと。船に精通した"船大工"がいるから、短期間で作り上げられたのだと。
だが同時にこうも考えているはずだ。ジウがこれだけの船を作るつもりで大人達を集めたのなら、なぜ黒陵の…玄武の模様を刻み込んだのかと。どうして青龍の模様ではいけなかったのかと」
シバはなにも答えない。
「そして少し前に反乱が起ったばかりの黒陵から多くの兵を船に乗せて、新祠官はまだまだ不安定な国内を無防備にさせていいのかと。包囲に向けられた兵や船の数が多すぎやしないかと」
恐らく否定しないことが、答えなのだろう。
「黒陵から来た"あいつら"にとって、豪華船を五十作り出すのも百作り出すのも造作ない。問題は、なにを乗せているか、だ」
「どういう意味だ?」
反応するシバの横で、ユウナは思っていた。
"あいつら"。
リュカを示唆していたスンユが、複数形で言わんとするところ。
なぜ知っているかなど、ユウナの疑問の焦点はそこではなく。
リュカと組んでいる者がいる――と、指摘されたところだ。
「凶々しい金色は、死者を蘇らせる力がある」
金色、それはつまり……。
どくん。
――玄武の祠官が隠せし、玄武の鍵を余に捧げよ
心臓が跳ねた。
「リュカだけではなく、ゲイが来ているの!?」
ユウナは上擦った声を出しながら、スンユの胸倉を掴む。
止めようとしたシバの手をぱーんと手で払い除けて。
"問題は、なにを乗せているか、だ"
「まさか、ふたり以外に船に乗っているのは、兵じゃないの?」
"凶々しい金色は、死者を蘇らせる力がある"