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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
 


 いまだサクが味わったことのない、女のナカで果てる悦びを間近にした金銀の競艶。


 痛みに唇を噛みしめているユウナを、壊すかのように腰を突く金色。

 小剣を床に落として、果てに上り詰めようとしている銀色。


 卑猥な艶を煌めかせて、光を弾けようとして輝く者達。


 ユウナの太腿に流れ落ちる、破瓜の血と混ざった半透明な粘液。

 前からも後ろからも、容赦なく虐げられる愛しの姫。


 そしてサクは、ユウナが……喘ぐリュカが落とした小剣に目を向けて、一瞬目に力が宿ったのを悟った。


 まさか……。

 まさか、姫様……。


 男達の切羽詰まったような果ての声。

 それはもう、人ではなくただの発情したケダモノの声としかサクには思えなかった。


 ぶるぶると震えるようにして、ユウナの体に一滴も残らず、その穢らわしい欲の残滓を放ち……。


 そしてユウナは――

 汚濁液に塗れて、力尽きたように床に沈んだ。


 まるで襤褸(ぼろ)のように。



 駆けつけて抱きしめたい。

 その顔に唇を落として、ユウナについた穢れを落としてやりたい。


 
 動けよ、俺の体早く動けよ――っ!!



 だがサクの体は動かない。

 代わりにユウナが……動く。


 彼女はサクを一度も見ることもなく、ただずるずると体を引き摺るようにして……父親の、祠官の亡骸を胸に抱いた。



――大好きなお父様……。



 その悲しみが。

 そのやるせなさが。


 サクの心を壊さんばかりに暴れた。


 同時に嫌な予感がする。



――私も、すぐに参ります……。



 リュカが落とした小剣に伸ばされるユウナの手。

 まさか――!?

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