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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
駄目だ、駄目だっ!!
――ユウナ、駄目だ――っ!!
自分に突き立てようとするな――っ!!
……ああ、誰か。
神でも魔物でもなんでもいい。
誰か、俺に力をくれ――っ!!
ユウナを救いたい。
ユウナを護りたい。
そのためになら、俺はなんでもするから!!
――……メルカ?
刃物を掴んだユウナの手を、足で踏みつけたのは銀の男。
自分ではない、別の男。
誰か、誰か、誰か――っ!!
俺を姫様のもとに!!
――ホウ、ワレヲモトメルカ?
その時、サクの耳に……男とも女とも判別つかない声がした。
――チカラノダイショウニ、オマエハナニヲササゲルカ?
サクはその声に必死に縋る。
相手は正体不明。
もしかして自分の幻聴かもしれない可能性もある。
だが、真実はどうであろうとも、それに縋ることだけがサクに残された唯一の希望だった。
もしもお前が、本当に俺に力を授けてくれるのなら……俺は。