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吼える月
第25章 出現
そんなサクの胸中知らずして、テオンは必死だった。
取り押さえようとする兵に噛みつき、どうにかしてサクをジウの肩から引き摺り落として逃げようと焦っていた。その度に兵に捕縛されながら。
「僕に触れるな!! ジウジウ!! サクお兄さん……玄武の武神将に手を出すんじゃないっ!! どこに連れる気だ!?」
「おやおやテオン様。随分とサク殿を気に入られている様子。大丈夫です、せっかく遠路遙々お越し頂いたのですから、昔話をしようとお招きするだけです。ただその話次第によっては、保証はできませんが……」
そこで初めて感じた殺気に、サクは口を引き結んだ。
空気がいいからと油断はできないらしい。今後の会話の内容によって、すべてが変わっていく。ジウを討たねばならないのか、その逆か。
それでも、リュカがなにかを仕掛けてくる前に、なにか手を打たねばならない。ジウは、なにか知っているはずなのだ。
ジウがリュカの手先になっているという可能性もあるのは、十分に注意しないといけない。
ありえないことだと思いながらも、絶対的にと言い切れないのが、リュカという男が新祠官までに出世できた現実にある。リュカは先見の明があることくらい、幼馴染みである自分は、とうにわかっていたのだから。
すべての可能性を含めて、まずはなにもわからない状況から脱しなければ、策もたてられない。ただユウナをギルに差し出して終わりにだけはしたくない。3日で帰らねばならないのだ。