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吼える月
第25章 出現


「なぜそう思う、玄武の武神将。堅苦しくなく喋るが良い」


 祠官とジウ、そしてテオンの視線をひしひしと感じながら、サクは手を戻して普通に答えた。


「あなた達はテオンが何度も海上の、偽の青龍殿に忍び込んでいたのをわかっていたはず。床下の海に潜っていた者達、或いは偽の青龍殿に忍んで、罠が発動するように暗躍していた者達は、そのすばしっこさから思えば、警備兵かそれ相応の身体を鍛えている大人の男だ。

そんな者達に海上の屋敷を見張らせテオンの動向を知りつつも、追い出したテオンをあの青龍殿に近づけさせないための策を講じず、さらにはわかりやすいように、薬を減らしたり掃除をしたりと、ひとが存在している痕跡を残していたのは、あそこにかけられた罠が破られないという自信と裏腹に、テオンにだけわかる合図を残していたんだ」

 サクは祠官を見た。


「"父は無事にいる"と。

遮断された繋がりの中、唯一あなたの心がテオンに伝えられる場所があるというのなら、それはテオンが自ら来る青龍殿しかない。

……一番会いたかったのは、祠官……、あなたじゃないか?」

「父様……?」


 祠官の表情が少し崩れた。


「違う……私はっ」


「そう言わざる環境にあるということか? 青龍殿で真意を話せられない状況にあると。つまり、あなたが怖れている相手の間諜が誰なのか、ジウ殿しか信用出来ない状況にある、と? ああ、信用出来るのはもうひとりいるな、このテオンもそうだろ」


 祠官は返事しなかった。


 だが何か悩んでいるような…そんな部分を垣間見せるようになった。

 ジウはなにも言わなず、サクにこの場を仕切ることにさせているようだ。

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