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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
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「ああああああああ――っ!!」
すべてを黙って見届けることを強いられていた、サクがゲイの呪縛を破って大きく吼えた。
左耳だけにぶら下がっている白い牙が、青白く発光する。
同時にその光は刃となって、リュカの男の背中を切り裂いた。
その肌に刻まれていたのは烙印――。
13年前、ユウナと共に始まった……惨劇の序幕。
「姫様ああああああああ!!」
激情に猛るサクの目からは、真紅の涙が流れていた。
「ほほう……。砕けた四肢を回復させるとは、人ではなき者と……契約したのか、サクよ」
愉快そうにゲイは言った。
ユウナを抱くサクに向けて。
「その体では契約しても、もって数日。契約した力をも使いこなすこともできず、ただ一方的に魂を食われるだけだ。相手の思う壷というところだな。それでどう生きていくつもりだ?」
「お前に……関係ねぇだろ。俺には……俺なりのやり方がある」
そしてサクは、リュカを睥睨した。
「俺は、お前を許さねぇぞ、リュカ。
お前は……ユウナに言ってはならない言葉を最後に言った。お前それをわかってて言ったのなら、お前程……残酷で非情な男はいねぇ……」
そしてサクは冷たく言い放った。
「姫様の敵は俺の敵。
だから覚えておけ。
……友情ごっこはおしまいだ」
リュカがどんな顔をしたのか確認もせず、サクはユウナを抱えると……窓を突き破って外に飛び降りた。
「馬鹿め。今外がどうなっておるかも知らずに。
餓鬼の……餌食になるがよい。ははははははははは」
凶夜に響き渡る金の声。
ただ冷ややかな面持ちを月に向けている銀。
「狂宴は、これからだ。
さあ、リュカ。死に損ないは放って置いて、事を進めるぞ」
そしてリュカはゲイに跪いて、頭を垂らした。
「御意」