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引き裂かれたroyaume
第6章 壊された記憶

* * * * * * *

 リゼットは、城のがらくた置き場だという部屋に連れられていった。

 否、オリアーヌががらくた置き場と呼ぶ部屋は、そんな粗末なものではない。

 生活感こそないが、丹念に掃除の行き渡った控えの間を抜けていくと、重厚な扉の向こうには、いかにも年頃の令嬢が生活している風な部屋があった。

 リゼットは、胸騒ぎを覚えていた。
 ここにいると、イルヴァの準備してくれたドレスに袖を通した時にも覚えた焦りが、押し寄せてくる。

「──……」

「リテスキュティージの東西が憎み合うようになったのは、私も知らない長い歴史の中でのこと。ご高齢の国民は、今でも本気で東を疎んじているわ。だけど私は、西部そのものが憎いのではない」

「…………。この部屋と、そのお話は、関係があるんですか?」

 リゼットは、オリアーヌを追って窓辺へ向かう。

 淡いカーテンを握った右手が、涙を堪えるようにして震えているのは、目の錯覚か?

「お前は、疫病神だわ」

「…………」

「西部の老人が東部を憎んでいる以上に、私はお前が憎い。お前は……、この世に生まれ落ちた瞬間から、私の大事なものばかりを奪ってきた」

「…──!!……っ、どういうことですか?」

 リゼットは、イルヴァの広間での言葉を思い起こす。

 さっきだけではない。

 リゼットは、イルヴァに時々、不可解な話をちらつかされることがあった。

「…………。私は、ここにいたんですか?」

 ふぅ、と、オリアーヌから深い息がこぼれた。

「この部屋は、お前が暮らすはずだった場所」

「──……」

「私に構って下さる時間も削って、お前を命懸けで愛したお姉様が、お前のために、遺した部屋」

「…──っ、……」

 リゼットは、傍らのクローゼットを開く。

 色とりどりのドレスや装飾品は、一流の職人が選りすぐりの素材で仕立てたものだと一目で分かるものばかりだ。サイズはどれも、見た感じリゼットくらいの身長、体型に合わせてあった。そして、何着か、見覚えがある。
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