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引き裂かれたroyaume
第6章 壊された記憶
「良いわ」
「…………」
「明日、このリテスキュティージ西部は、再び東部と交戦する。例の島から、東部の遺跡が出てきた所為でね。お前には、東部の軍の撃退を命じる」
「…──っ、それって……」
「それが終わったら、好きなようになさい。東部へ戻るも良し、ここに留まるも良し」
「本当に……?」
ただし、と、オリアーヌの口許が不気味に歪んだ。
「お前のいたエリシュタリヴ・オルレの頭……あのカントルーヴの後継者を、そうね……殺して首を捕って帰りなさい」
「…──!!」
「もっとも、なかなか一筋縄ではいかない女のようね。お前が頼めば、わざと負ける気もするけれど」
「エメは、戦いに私情を持ち込んだりしません」
「なら、殺した証拠で構わないわ。良いこと?あの女、たった一人を片付けてくれば、お前は自由の身になれる。イルヴァの命も、自由も保証する」
「そんな……」
それでは、オリアーヌは初めから、リゼットにエメを殺させるように事を運んでいたようではないか。
「──……」
「明日の朝まで考えなさい。今夜はここで……、お姉様のために、この部屋で過ごして差し上げなさい」
「まっ、待って下さい」
「リゼット……?」
リゼットは、腰を上げかけたオリアーヌを制した。
答えは考えるまでもない。
リゼットは、オリアーヌの条件を呑んだところで、きっとイルヴァに叱られるだけだ。あの優しく残酷な人を、救ったことにはなるまい。
それでも、それでも、抗えない思いがある。
「……分かり、ました……」
リゼットは、戦場でもこれだけ震えたことのないほど震えていた。
「分かりました。それが陛下の、ご命令なら」
「…………」
「エメを……殺します。陛下の敵、エリシュタリヴ・オルレのトップを……この手で」
「リゼット……」
「命に変えても」
「…──っ」
「私の、命に変えて、あの人を」
「…………」