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引き裂かれたroyaume
第6章 壊された記憶

「……リゼットの人生、何なんですか……」

「…………」

 エメは、リゼットの生家にまつわる色んな噂話を常々聞いていた。さればこそ、尚更、並大抵の愛ではその孤独に寄り添えないと思った。身も心も、この運命の全てを懸けて、リゼットの未来を笑顔でいっぱいにしようと決めていた。
 リゼットをエリシュタリヴ・オルレの副官に指名するに至るまで、正直、迷った。この人事がリゼットを苦しませる材料になるまいか、決断を出すまで時間がかかった。それでも、リゼットほどの適任は、いなかった。あれだけ軍人としての器量に長けた人物は、今でも他に知らない。
 案の定、リゼットは、貴族達の新たな噂の餌食になった。
 エメは、リゼットが自分の情婦だの性的なはしためだのと嘲笑されればされるほど、あえて周囲に渾身の愛を見せつけた。ベッドでは、壊れ物を扱うように神経質になっていた。騎士が姫君にかしづくように、あの恋人を尊んだ。

 それでも、確信していたはずの未来は、いつの間にかどこかへ消え去っていた。
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