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引き裂かれたroyaume
第6章 壊された記憶

「エメ」

「──……」

「リゼットの髪の色……不思議に思ったことはない?」

「何を仰りたいんですか?」

「あの子の父親が何故捕まったか、噂で聞いたことはあるでしょう」

「…………」

「あの子には、貴女がどれだけ庇っても、悪い目を向けられるだけの理由があったの。エメが……、純粋にあの子を必要としていたのは、理解している。けれど、社会は、正直だけでは通用しない。人間の価値を紙切れなんかで決めてはいけない、なんて、ロマンティストの口癖ね。でも貴女だって、カントルーヴの娘でなければ、きっと世間知らずの若輩扱い、隊員達は付いてこなかったでしょう」

「──……」

「それでもあの子を手にかけたくないなら、早く次の副官を決めて、リゼットのことは諦めて」

 分かっている。世間とは、所詮、肩書きだの利益だのに執着している人間こそ、真っ当だと認められる。ありのままの精神で、見返りのないものばかりに目を向けるような人間は、社会から弾かれて異端視される。

 何のために生きているか分からなくなる。こんなにも醜く強制された世界は、何のために存在しているか、神さえ疑う。

「リゼットを……殺せば良いんですね?」

「貴女が本当にあの子を想っていたのなら」

「──……。分かりました」

「…………」

「リゼットは、……始末します。あたしが、彼女を……」

 葬って、そしてこの命も擲つ。

 手に入らないなら、殺してしまった方がましだ。この手をあの綺麗な血で真っ赤に染めて、そして、あの白い指先に、この穢れた返り血を浴びせる。







第6章 壊された記憶─完─
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