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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──
* * * * * * *
ああ、また、残酷なだけの優しい過去(まぼろし)の夢を見た。
リゼットは、掴みどころのない幻影に迷い込んでいた意識に働きかけてきた目覚まし時計の無機質な音を、手探りで止めた。
心地好い眠りを与えてくれた寝具は、リゼット一人分の体温が染み込んでいた。朝特有の仄かな冷気が、頬の上を漂っていた。
耳を澄ませば、窓の向こう、庭園の方から、メイド達が挨拶を交わしている声が聞こえる。朝一の鍛練を始めている軍人達のかけ声も聞こえる。
こうしていると、それら全てが、こことは別の次元に感じる。
リゼットは、あまりに穏やかな朝を迎えていた。
「──……」
優雅な寝台から起き抜けて、いつだったか東部にいた頃、当時仕えていた王の私室で見かけたようなバスルームへ向かう。そうして顔を洗い終えると、贅の尽くしてあるクローゼットの内一つを開いて、適当なドレスを選び始めた。
「…………」
さっきまでいた夢の世界は、笑えるほどご都合主義なものだった。いっそ絶望的なものだ。
リテスキュティージの東西が冷戦状態だった頃、東部の内部はとても平和で、エリシュタリヴ・オルレは王宮のお飾りだと揶揄されながら、やはり一目置かれていた。そして、代々その長を務めてきたカントルーヴ家の長女、エリシュタリヴ・オルレの現隊長、エメは、いつでも輝いていて、勇敢で、繊細さと逞しさを持ち合わせる軍人だ。
リゼットは、夢の中でも、エメを敬愛する長官と呼び、生涯を約束したパートナーと呼んでいた。
夢の中で、エメの言葉に、眼差しに、温もりに、今朝も本気で一喜一憂していた。
リゼットは、夢の中の自分自身を振り返っては、滑稽すぎて胸が痛む。
今更、エメの恋人を名乗る資格はない。
あれだけ綺麗だと言ってもらった身体は穢された。国籍さえ、半分はあの美しい人の敵(かたき)と同じだったのだ。
リゼットは、東部の生まれではなかった。この西部の、しかもヤーデルードの王宮で、王女としてこの世に生を受けたのだ。そして、実の母親の妹と、──実の叔母と、肉体関係を続けていた。