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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──

* * * * * * *

「オリアーヌ陛下」

 窓の下、強堅な城壁に守られた壮大な庭園を眺めていると、聞き親しんだ声がした。

 声の主は、オリアーヌのとりわけ引き立てている、メイドの一人だ。

「リゼット様が、まもなくご出立なさいます」

「そう。もうここは良いわ。お前はあの娘の部屋の掃除をなさい」

「かしこまりました。……あの、……」

「何?はっきり仰い」

「──……。はい、……」

 メイドの真摯な双眸が、宙を彷徨う。

 オリアーヌは、それからそのエメラルドの輝きに、今度こそしかと捕らえられた。

「陛下がリゼット様に下されたご命令を、撤回なさって下さいませ」

「──……。何故?」

「東部の王室付き軍隊エリシュタリヴ・オルレは、選りすぐりの貴族、軍人から構成された、云わば精鋭部隊です。特に、トップのエメ・カントルーヴは武家の生まれの血統書付き……強敵です。いくらリゼット様が元副官でも、討伐は不可能かと」

「返り討ちが怖くて戦わない軍人が、どこにいるの。リゼットは、命令を呑んだ。問題があって?」

「万が一、……リゼット様が、お帰りにならなかったら……イルヴァ様はどうなさるおつもりですか?」

「あれが帰らなくても、カントルーヴの娘の訃報がこちらに届けば、イルヴァは自由にしてやるわ」

「…──っ、リゼット様には、相討ちすら不可能です」

「私の前で」

「っ……」

 オリアーヌの喉から、自分でも驚くほど冷たい声が出た。

「私の前で、リゼットを心配するものではありません」

「陛下……」

「あれはこの国の異物。お前が、あれを王族の娘として心配するなら、私はお前を側に置いておけなくなる」

「申し訳、ありません……。二度とこのようなことは口にしません。無礼を……誠に申し訳ありませんでした」

「──……」
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