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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──
そうだ。自分の肩書きを八つ裂きにするだけでは足りない。心は晴れない。
ソフィルスも、オリアーヌも、いつだってこんな紙切れに踊らされて生きてきたのだ。
姉妹の生家は成金だった。成り上がりの貴族に対する世間の目は、冷たかった。ソフィルスは周囲を見返すために、王の地位を志した。オリアーヌは、当然の流れでその後継者に立てられた。
少女の頃は憧れだった地位に就いて、実際、欲すれば何でも得られるようになった。
オリアーヌは、それなのに、地位や財産を備えているだけでは叶えられないものを願うようになってしまった。
イルヴァに出逢って、初めは美しい宝石を欲するのと同様に、その姿かたちに心を打たれた。次第に夜の寝室に招いていた他の貴族達を遠ざけるようになっていって、イルヴァだけを公の場で恋人と紹介した。オリアーヌは、そして事実上、リードホルム家に下賜していた金品に関する書類を破棄して、イルヴァを宮廷仕えではなく一貴族として優遇した。
それでも、満たされなかった。
世界を純粋に見つめるあの瞳に、独占されたい。奇跡の響きを備えた声に、王に対する礼節など似合わない。
手に入れるのではない。手に入れられたい。
オリアーヌは、自分より二回りも年下の女性を相手に本気でそんな風に願ったものだ。
だが、オリアーヌはイルヴァにとって、所詮は王でしかなかった。あの残酷な恋人は、あんな惨めな姪を選んだ。
「うぅっ……ああぁ……」
悲しみから逃れる術に追い縋って、あの身体を犯した時、誰にも踏まれたことのない白雪を汚すのにも優る恍惚に顫えた。鍛練した軍人でも耐え難かろう責め苦をあの柔らかな肉体に刻みながら、怯える吐息のこぼれる唇や、あくまで屈辱を否定する表情(かお)から目が離せなくて、得も言われぬ快楽に酔った。
女として愛してくれないなら、側に置いても虚しいだけだ。
オリアーヌは、それなのに、今度こそ王の権威という武器を振るって、 愛する人の忠誠も、命も、ただただ握り締めてしまったのか?