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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──
「時に、リゼット様」
輪の中から、隊員の一人の改まった声がした。
リゼットが隊員達を見回すと、一人の軍人がかしこまってこちらを見ていた。正規軍の中でもベテランで、年のほどは四十半ば、やはり平民出身だ。
「どうぞ?」
「はい。リゼット様はエリシュタリヴ・オルレの隊長をお探しになるとのことですが、手がかりはあるのですか?また、運良くかの軍隊に遭遇しても、貴女様が御自ら、かつての部下を斬り殺さねばならない事態になるのでは?」
「話して、引き上げさせる。私はエメに用があるの。エリシュタリヴ・オルレは無意味な殺生を好まない。私が刃を向けなければ、彼らも同様」
「いやいや、リゼット様。あやつらは、話して分かるお人好しとは思い難い。手っ取り早く、お願いなされば良ろしいのです」
「お願い……?」
「貴女様はお得意でしょう。もっとも、お願いの相手が男となれば、少々作法が変わってきます。私が予行演習の相手をしましょう」
「…──っ?!」
リゼットは、悪寒で凍えそうになった。
軍人の、平素は落ち着き払った双眸が、やけにぎらぎら光っていたのだ。
濁ったエメラルドの目に、全身を舐め回されている?
「我々もお手伝いします」
「っ……」
両腕が、左右にいた隊員二人に拘束された。
すごい力だ。武器を持った敵に対抗する術なら何通りも心得ているのに、丸腰が、これだけ厄介なものだったのか。
「あすこに東屋がある。連れて行け」
「無礼者!離しなさい!んっ……」
「リゼット様」
軍師に顎を掴まれて、脂ぎった顔が視界いっぱいに入ってきた。
オリアーヌに抱かれた時も、ベネシー共和国のサリアになぶられた時も、死ぬほど怖くてぞっとした。
それでも、何とか、正気でいられた。
近くにイルヴァがいてくれたから、耐えられた。エメのぬくもりを覚えていたから、壊れなかった。
だが、これ以上優しいものを奪われては、何も残らなくなってしまう。ましてや男の身体は、ゲテモノだ。
「……私は、東部の人間……貴方達にとって魅力なんてないはずよ」
「辱しめる価値はある。昨日まではイルヴァ様の監視があったからな、貴様を好き勝手にさせておいたが、勘違いするな」
「東屋まで待てないか?聞けば、貴様は筋金入りの淫売だそうじゃないか。どれ、まず唇だけでも味見してやろ──」