この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
引き裂かれたroyaume
第1章 引き裂かれた二人
「──……」
「どうしたの?まさかその綺麗なドレスの中に、私を鞘にしたがっている刃物でも隠れているのかしら」
「……ヤーデルード王家は、臣下にそんなはしたない芸をさせて、忠義を確かめるんですか?」
「忠告しておくわ。今、西も東も治安が悪い。東部には工作員を派遣してある。お前が東西の関係を悪化させるような真似をすれば、どこかで無駄な死人が出るかも」
「…──っ、……」
ほら、と、オリアーヌの指先が、ひらりと招きの動きを見せた。
「…………」
落ちぶれていても、バシュレは貴族の家柄だ。
リゼットは格式ある旧家で生まれ育った。
それなのに、いつでも成り上がりや王族のお気に入りの貴族達から、蔑ろにされてきた。努力して地位を得ても、今度は長官の愛人呼ばわりだ。その上、こんな辱しめまで強いられている。
いっそあの戦火の中で、花と散った方がましだったのではないか。