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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──
会いたくて、会いたくて会いたくてたまらなかった。
リゼットは、エメに会える夢に何度も苛まれては、目が覚めた時、ほっとした。それと同時に、胸の奥の大切なところに空洞が広がっていったものだ。
虚無が広がれば、いつか自分自身も消えられる。本当に望んでいた未来は諦めるより他にない運命の中で、ただ、それだけが希望だった。
「──……」
絡みつく腕と腕がほどけていって、何を探るでもなく肩や髪を確かめ合っていた指先が、どちらからともなく離れていく。血肉と衣服を通して呼び合っていた鼓動が、重ならない距離に戻っていった。
「…………」
リゼットが顔を上げると、とても近くにエメの曖昧な微笑があった。
決して心から笑い合える再会ではない。凛としたトパーズの色を深める切なげな影が、それを物語っていた。
「どうして……私なんて……」
「君を見捨てた。一人にさせた。……どうして償えば君の傷が癒えるかって、ずっと想ってた。……」
「…………」
「過ぎた時は戻せない。リゼットが強いられてきたことを、この手で清算したいなんて傲慢だった。怖かった?それとも、苦しかった?……君は、弱音を吐くようなお嬢様じゃない。分かってるけど、ここにいるのは君とあたしだけ。君は頑張った」
「あ……」
「泣いて。怒りたいなら怒れば良い。リゼットの……本音を見せて」
「っ……、ん……」
離れたばかりの二人の鼓動が、また、近づいていく。
リゼットは、もがけないほど強く、強く、エメに抱き締められていた。
本音は、ただ、貴女とどこか遠くへ行きたい。誰にも干渉されない綺麗な場所に、永遠に閉じ込めていて欲しい。それだけだ。
この身体さえ、魂さえ、エメだけを想っていたあの頃のままなら、きっと躊躇わないで口にした。思いきり泣いて、怒って、淋しくて怖かった本能をぶつけたかも知れない。エメにわがままを言ったことはない。だから、今だけは、それを許して欲しがったろう。
「あっ……ぅっ」
急に、二日前の傷がひりっと痛んだ。
リゼットが優しさに流されそうになったのを、咎めるようなタイミングではないか。