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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──
「リゼット?」
「──……」
リゼットは、エメの肩を押し返す。
エメの、リゼットを確かに繋ぎ止めてくれる腕は、いつだって、ほどきたがればすぐにほどける。今も同じだ。
リゼットは、腰に差した長剣の鞘を、半分ほど引き抜く。
「私は……エメと戦いに来たの」
「リゼット……」
「オリアーヌ陛下に逆らえない。私の血は、貴女と一緒になれない……西部のものなの。母は、貴女に会ってもらった、あの婦人ではなかった。オリアーヌ陛下に聞かされたわ」
「君が、ソフィルスの娘だって?」
「知ってたの?」
「昨日、アルフリダ陛下に聞かされて」
「…………」
「リゼット」
エメの手が、その腰に携えてあった長剣の柄を握る。
すっと、銀色の白刃が抜かれていって、春の陽射しが反射した。
リゼットに、エメの握った剣の刃先が向けられた。
「君から来い。あたしは君に殺られるわけにはいかない。君を殺すのは、あたしだから」
「…──っ。……」
リゼットは、今日初めて目が覚めた心地がした。
ぞくっとした。
これは快楽だ。
この世で一緒になれないなら、その血を浴びて、命を呑み込んでしまえば良いのだ。
エメを誰にも触れさせない。そこにあるのが忠義という感情でも、アルフリダにさえ渡したくない。
「たぁあああああっ……」
リゼットは、剣を抜いてエメに走りかかっていく。
二人の剣と剣のぶつかる音が、青い空気をつんざいた。