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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──
白刃と白刃の激突音が、穏やかな海のさざめきをかき消す。秘めやかな岩場の一騎討ちは、砂風吹が舞い上がって、激しさを増す息を覆う。
リゼットは、全身に蔓延る傷口に響いてくる手首の反動に耐えながら、エメの剣を切り返していた。
「はぁっ、あぅっ……はぁ、うぅ……」
リゼットの、皮膚ごと斬られたブラウスの袖から血が滲む。
すかさずエメの白刃を押し返す。
二人の剣先がクロスした。
「はぁっ、はぁ……」
「見事だ……リゼット。西部に入って、こんなに手こずらせてくれたのは、君が初めて」
「たぁああっ!!」
「…──っ」
決死の力を腕に込めて、剣を払った。リゼットは、柄から受けた反動に弾かれるようにして、後ずさる。
エメの、傷一つなかった首筋に、赤い線が入っていた。
「あ……ああ……ああっ!!」
手首に鈍い痛みが走った。軽い痙攣を起こしながら、エメに鷲掴みにされて、真後ろの岩場に押しつけられる。
リゼットは右手を縫いつけられて、一歩も逃げられなくなった。
喉元に、尖ったひんやりしたものが、あてがわれてきた。
「くっ……」
落とした剣を足で引き寄せて、左手を伸ばす。
否、届かなくても、まだ術はある。
「っ……」
からん、と、また金属が砂場に落ちていった音がした。
リゼットの、エメを狙って振り上げた左手が、剣をなくしたその右手に捕らわれた。
「やっ、……」
手首に圧力が加わってくる。ぱかっと開いた傷口から、血が溢れていく。
腕にとろんと熱いものが広がると、両腕がすっと自由になった。身体ががくんとくずおれる。
リゼットは、エメが離れていったのを目で追う。
ダメだ。やはり強い。しかも、エメは、まだ限界の本気を出していない。
それに引き換えリゼットは、洋服の中に、打ち明けるのもおぞましい傷を隠している。それでなくても敵う気がしない。