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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──

「リゼット」

「──……」

「まだ立てるだろう?来るならおいで」

「…………」

 いやだ。いやだ。

 リゼットは、エメが自分の剣を握り取るのを見つめながら、心の中で首を振る。

 目前の敵がエメでさえなければ、剣を握って、その心臓を狙っていた。一撃で決着をつけていた。

 それでも、敵はエメだ。愛して、愛してもらって、あんなにも大事にしてくれていた恋人だ。

「うっ、ぐす……」

 リゼットの前に、銀色の光が差し出されてきた。

「エメ……?」

「掴め」

「ダメ……ごめんなさい……私……もう……」

 戦えない。

 リゼットは、一生オリアーヌの玩具で構わない。イルヴァは、この身体と引き換えに、否、望まれれば命と引き換えにでも、救えば良い。

「エメ……私……大事な人が、いたの……。故郷のお姉様よりずっと私に優しくしてくれた、昔から知ってくれていた人……」

「──……」

「オリアーヌの、恋人……だったんですって。私が、仲良くしてしまった所為で……身体を許してしまった所為で、彼女が……危ないの。私が死ぬべきだったのに。……貴女を殺せば助けるって、あの女に……言われたわ」

「リゼット……」

「こんな理由で戦った。いいえ、戦えなかった。私は強くない。貴女の、……昔の部下として、恥だわ。貴女に守られてばかりではいやで、向こうにいた頃も、全然可愛い恋人なんかじゃなかったわね。西部に来ても、誰にも頼らないで誰にもひざまずかないって、……強がって、無謀なプライドにすがってばかりで、私は……淋しかったの。怖かったの。何の力もない、でも強くなりたくて……」

「──……」

 リゼットの腕が、すっとエメに持ち上げられた。

 衣服からむき出しになった切り傷に、くすぐったい熱が落ちてくる。

 エメの、リゼットの血液で赤くなった唇が、また別のところへ移動していく。手首に、肩に、頬に、懐かしいキスが降り注いでくる。

「いや……」

「あたしのこと、もう嫌い?」

 リゼットは首を横に振る。

 キスが、無傷のところにも移ってくる。

「リゼットに、痛い思いはさせたくなかった。傷付けないで血を流せる方法が、あれば良かったのに……ね」

「ん、んん……」

「リゼット」

「っ、ん……」

 唇から抵抗の余地を奪われた。エメのそれが重なってきて、啄まれてきたからだ。
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