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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──
「ん、はぁっ」
初々しいキスを何度も重ねて、そっと舌で濡らされる。吐息をこぼせる程度に開く隙間に、リゼット、リゼット、と、甘い囁きがとけこんで、愛してる、と、脳髄に魔法をかけられてゆく。
リゼットは、エメになされるがまま、唇を薄く開いてその舌先を迎え入れた。
「はぁっ、エメ……」
手のひらと手のひらを合わせてぎゅっと握って、一つになった二つの唾液を、吐息を、貪り合う。
リゼットは岩場に寝転がって、数秒振りに、逆光の中のエメの顔を見上げた。
エメの手がブラウスの膨らみに伸びてきた。
片手は強く繋いだまま、心臓に近い方の胸に、甘ったるい電流が走る。リゼットの背がひくんと仰け反る。
「あっ、ああっ……」
ぎりぎり触れられている力加減で、左胸の膨らみが、円を描いて撫でさすられる。頭の天辺からつま先まで、熱い眼差しを浴びながら、手のひらと、衣服に覆われた乳房に、大好きな温度が伝わってくる。
「ん、はぅ……っ、!!」
唇がまた触れ合った。
リゼットは、反射的にエメを押し飛ばす。
視線を巡らせると、エメの、吃驚したような目がこちらを見ていた。
リゼットは、今しがた外されかけたブラウスの襟元を握る。
どこに触れられても、どんな言葉もどんな愛撫も、うっとりしていた。それなのに、衣服を脱がされかけた瞬間、頭で警報が鳴ったのだ。
「やっぱり、私のこと、忘れて……」
「どうして?」
「──……」
こんな身体を見られたくない。
オリアーヌに知り尽くされて、イルヴァにその慰めを請って、貴族達の娯楽にされて、挙げ句に侵略の道具になった。
変わってしまった。エメが、ともすればガラス細工よろしく触れてくれていた肉体は、今や醜くぼろぼろだ。鞭に打たれた形跡だけならまだしも、乳首に貫通したニードルの跡も、それよりむごいところに施されたピアス穴も、同情どころか忌まわしがられる。
「エメのこと……好き。好きだから、貴女の目を……汚したくない……」
「──……」
「エメのものじゃなくなってしまった。私のものでもなくなった。こんな身体、貴女に見られる価値はない」
「リゼット」
「…………」
「来て。リゼットに、全部話すから。一生一緒にいたいから、あたしも、隠し事はしない」
東の空が翳り始めて、海に、蜜色の光が広がっていく。