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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──
リゼットは、エメと潮の匂いのたゆたう洞穴に入って、離れていたおよそ一ヶ月間の話を聞かされた。
もっとも、今しがたエメの聞かせてくれた話は、とても信じられるものではなかった。否、信じたくないものだ。
リゼットは、エメの真剣そのものの声が語り聞かせてくれた一部終始が、いっそ全て自分を宥めるための方便だと思い込みたい。
「呆れた?」
「──……」
「リゼットがここに来た夜。あたしは半日ももたなかった。君を奪われた東部は、太陽の昇らない死んだ土地。少なくともあたしにとってはそうだった。すぐに君を探しに行った。そして、あの記事を見せられた」
「それでも、見捨てないでいてくれたのね。あんな醜態を晒した私を」
「もっとちゃんとした扱いだったら、国のために諦めてたかな。あたしが一人で生きてけば良い。……記事があんなだったから、尚更、何もしないで帰るつもりになれなくなった」
「それで、……」
「今になって、城に乗り込めば良かったって、後悔してる。どうせ東西がやり合うことになるなら、何を怯えてたんだろうって……情けない。君を裏切る真似までして」
「うっ……」
「ごめん。泣くほど幻滅させた、か」
「違うの、ぐす……ひく……」
リゼットは、息が出来ないほどせり上がってくる涙を啜る。
それでも鼻の奥が痛い。胸はもっと痛くて、きっと化粧も無様に溶けてしまおうほど頬にこぼれて、その度に、濡れた目尻を袖口で抑える。
エメが助けようとしてくれていたなんて、知らなかった。しかも西部の女性に脅迫されて、リゼットと同じ辱しめを強いられていた。
そんなこと、リゼットに、どうして想像出来たろう?
リゼットは、ずっと一人で戦ってきたつもりになっていた。出逢ってから今日まで、エメさえ一度だって心から信頼出来た試しがなかった。
それなのにエメは見捨てないでいてくれた。リゼットが西部で生きていた所為で、苦しめた。