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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──
「っ……」
「反省の態度も振りすらなし。リゼットを殺しておきながら、私を慰めるのは貴女のメイド?ざけんじゃねぇよ」
「リゼットを殺したのは東部の女。──……。これを」
オリアーヌはイルヴァをそっと押し返して、キャビネットから一枚のメモを取り出す。それをイルヴァに差し出した。
「…………」
「これ……」
「メイドが、あの娘のバニティーケースの下から見付けてきたの。リゼットから、貴女宛て」
「『もし私に何かあったら、東部から持ってきた所持品と、ソフィルス様の遺してくれた部屋の処分は──」
「全て貴女に任せるそう。死んでも叔母であるこの私に、リボン一つ触られたくないんですって。最後まで可愛いげのない姪だこと」
「──……」
オリアーヌが壁を離れると、メモが畳まれていく音が追いかけてきた。
「リゼットは……こうなること……」
甘ったるいそよ風を聯想する、それでいて官能を貫かれそうに芯のある、綺麗なソプラノが耳に触れてきた。
「……羨ましい。可哀想なのに、何でだろ……幸せだったんじゃないかって、思います」
「ただの馬鹿だわ。あの小娘、あんな条件を真に受けるんだもの」
「──……。そうでしょうか?」
「貴女は、そう思いたくないでしょうね」
「…………」
「約束は約束。傷が癒えたら、お好きなところへ行きなさい」
「え……」
「リゼットの遺品。私がリードホルムに下賜した土地や金品を、もし貴女が気にしているなら……そうね。あの子のドレスの六着もあれば、それでなかったことになるわ」
これで良いのだ、と、オリアーヌは自分自身に言い聞かせる。
イルヴァの本音を知ってしまった。あの馬鹿正直な姪ではないが、ここは引き下がってこそ、恋ではなく、愛の証というものではないか。
こんなにも美しく、こんなにも純粋な人に、一生を王のご機嫌取りに使わせたくない。
ソフィルスも、リゼットも、こんな風に苦しんだのだ。
愛する人と距離を置くということは、自分の一部を引き剥がすほどの痛みを伴う。なんて甘美な苦痛だろう。
「……貴女を愛することを許されないなら、使用人として、お側に留まります」
「何……言って……」