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引き裂かれたroyaume
第7章 *最終章*失われた希望と、──

「陛下に、私は一切触れません。ここにいさせて下さい。……メイドに聞きました。王位を退こうとなさったって、本当ですか?そんな、後継者も決まってないで、内乱の起きるようなことをなさる王は……側で監視していなければ、安心してこの国では住めません」

「…──!!……あの、お喋りっ……」

「この刻印」

 イルヴァがドレスの襟ぐりをそっとずらしていく。

 シャーリングから、目を背けたくなるほどの火傷の痕が覗いた。

「罪人を意味する方じゃなくて、わざわざ王家の……ヤーデルードの家紋を捺されていたなんて。こんなものをつけられて、貴女以外の女とこの先上手くやっていける気がしない」

「っ……。リゼットが、帰ってきていれば良かったのにね。本当に悪いことをしたわ」

「陛下。……オリーヌ様」

「…──っ、……」

「あの子は、ソフィルス様の娘。……妹みたいに大事に想っていた人です。あの子のものになりたかったわけじゃない」

「イル、ヴァ……」

「リゼットがこの城に入った日、私は彼女のお目付け役になりました。……オリアーヌ様にとって、必要なくなったんだって、諦めた。実際、私がリゼットを迎えに来ても、貴女はあの子のドレスのことや、あの子のスケジュールのことばかりを話題にしていた。私は、少しの間、寵愛を頂いていただけの女だと、貴族達から認識されていきました」

「──……」

 でも、と、オリアーヌの片手にイルヴァのそれが伸びてきた。

 哀悼にたゆたう双眸は、それでも無類のエメラルドの煌めきが備わっていて、無条件に信じられる強さがある。

「貴女の気持ちを聞かせて下さい」

「っ……」

 オリアーヌの中で、オリアーヌ自身を生きづらくさせていた何かが、音を立てて崩れていく。

 卑怯だ。今すぐにでも王座を投げ出してしまいたくなるではないか。あの優しい姉のように、あの生意気な姪のように、愛にこの身を投じたくなる。

 それでも、オリアーヌには未来がある。イルヴァも、幸せになるべき人間だ。
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