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引き裂かれたroyaume
第1章 引き裂かれた二人
「リテスキュティージは、東西それぞれが別個の王家に統治されている。西はヤーデルード、そしてここ、東はシャンデルナ。東部と西部は同じ国でありながら、長い間、対立してきた」
「時々小さな紛争が勃発しては、冷戦状態を引きずっていた。これほど大事になったのは、初めてだ。そして敗けた。被害はあの通り。王宮のお飾りだってけなされていたウチまで出陣、今、財務省が犠牲になった隊員の家族に支払う賠償金を計算している」
「命は、お金で購えるものではないわ」
「それで君が責任を感じているなら、間違ってる。……リゼット。ヤーデルードが寄越してきた和睦の条件、あたしは納得していない」
「何の……、ことかしら」
「エリシュタリヴ・オルレの副官を、向こうの軍に迎えること」
「──……」
リゼットは、エメの、他の部下には絶対に見せなかろう切なげな双眸に耐えかねて、目を逸らせる。
いつの間にか掴まれていた二の腕が、きしっと、痛んだ。
リテスキュティージの長らく続いた内争に、昨日、ようやっと幕が降りた。
ここ東部は劣勢だった。西部の突きつけてきた和睦文書を呑まざるを得なくなったのだ。
町の被害は莫大だった。だが、降伏した今、シャンデルナの王家も町も、存続だけは保証された。
そして、件の和睦条件の中に、リゼットを西部で従軍させる旨が含まれていた。