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引き裂かれたroyaume
第1章 引き裂かれた二人
* * * * * * *
リテスキュティージの東部、シャンデルナ王族の居城の聳える丘の麓に、白い石造りの屋敷がある。少し前まで極彩色の小花が散らばっていた庭は、今は、火薬に汚染された空気に侵されて、陰気な色を帯びていた。
エメが私室で寝支度を済ませた時、ほの暗い部屋の向こうから、扉の叩く音がした。
「フロリナ……」
訪ねてきたのはフロリナ・ジャスティン、この屋敷に行儀見習いを兼ねて奉公に上がっている、貴族の娘だ。
「こんな時間にごめんなさい。お姉様。……あの、明日から休暇をおとりになったって、本当ですの?」
「ああ。戦も終わったし、たまには」
柔らかな紅の浮かんだ白い頬、フロリナの、それを彩る色素の薄いブロンドの前髪の影を落とした碧翠の双眸が、たゆたった。
「リゼット様を……訪ねにいらっしゃいますの?」
「──……。何で?」
「メイドに聞きました。お姉様は屋敷をお空けになるって。ダメです、西部はまだ危険です!……あっ」
エメはフロリナが進み寄ってきたところでその片手首を掴み上げて、桜貝の爪に彩られた指先に、軽くキスした。