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引き裂かれたroyaume
第2章 踏みにじられた想い

* * * * * * *

 夢を見ていた。

 夢の中でリゼットは、いつだったかエメと過ごした夜の情景を眺めていた。

 リゼットがエリシュタリヴ・オルレに入って半年ほど経った頃、あの美しく勇敢な武官の屋敷に初めて世話になった夜の記憶だ。

 二年前、リゼットは十七歳で、エメが二十歳、二人ともエリシュタリヴ・オルレでは若年だった。

『良いの?独身の貴族は、その貞節で値打ちが決まる。君は咎められたりしない?』

 エメを除くカントルーヴ家の人間も、使用人達も寝静まった深夜の屋敷で、二人、窓辺で寄り添っていた。

 リゼットの肩に絡みついていたエメの腕がするりと緩んだ。腕に、その指先が滑っていって、二人の手と手が重なった。

『お母様が期待なさっておいでなのはお姉様だけ。私は、昔から厄介者なの。きっと私が美しくないから』

『それが本当なら幸運だ。あたしだけがリゼットの美しさを理解して、独占出来る』

『ん、はぁ……』

 じゃれ合う指と指の間に汗を握って、振り向くと、吸い込まれんばかりの碧い瞳が微笑んでくれた。

『エメ。私、添い遂げるなら貴女でなくてはいや。エメが私を好きだと言ってくれなくなったら、私は貴女のメイドになる。奴隷だって。……だから、……』
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