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引き裂かれたroyaume
第2章 踏みにじられた想い
ほんのり冷たい、穏やかな空気がたなびいていた。目蓋の裏に滲んでくる蜜色は、悪夢の影も薄れてゆく明るさだ。
目尻から頬にかけて濡れている。何故だ?
リゼットは、自分の身体をくるんだ柔らかなものと、熱いような夢の中にいた時から右手に握っていた懐かしいものに安心しきって、微睡んでいた。
意識はとっくに現実にあるのに、起き出せない。
「ん……」
東部の屋敷にいた頃も、こんな朝を迎えたものだ。特に王城の聳える丘の麓の白い屋敷に世話になった翌朝は、起きて一番に、愛おしい人肌が側にあった。
「ふぅ……ん……んぅ……」
だんだん、寝息の余韻が深い溜め息に変わっていく。
「ん……んん……うぅ……」
リゼットが寝返りを打った、その瞬間だ。
「わっ」
「あぅっ?!」
いきなり身体に軽らかな重みが落ちてきた。
リゼットを下敷きにした重みもとい人物は、すぐ離れいった。
「…──っ!!イルヴァさん?」
「おはようございます、リゼット様。お怪我はありませんでしたか?おやすみのところ失礼しました」
「…………」
リゼットは自分の右手を確める。
確かに何か握っていたのに、右手には、何もなかった。
「私……」
「昨夜、リゼット様を陛下のお部屋にお迎えに上がったところ、ぐっすり眠っていらっしゃいました。それで私が、勝手ながらお部屋に運ばせていただきました。下着と寝間着は城のものです。清掃のメイドが入室してきてはいけませんから」
「…………」
リゼットは半身を起こす。それから重たい目蓋をこすって、辺りを見回す。
離宮の私室だ。
そしてリゼットは、下着も寝間着も、しっかり身につけていた。