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引き裂かれたroyaume
第2章 踏みにじられた想い

「そっか……寝間着など、まだ荷物を解いていませんでしたので」

「昨日は慌ただしかったですもんね」

「──……。私、イルヴァさんの手を、握っていたんですか?」

「……はい、それで、寝返りを打たれた拍子に」

 さっきの事故が起きたわけか。

「夜中の護衛も貴女一人で?……監視役も大変ですね。私、夜襲は自分で対処出来ます」

「そうですね。陛下には、夜は無理のない範囲で構わないと言いつけられております」

「では、今朝だって放っておいていただいてたって」

「今朝はお側にいたかったんです」

「──……」

「リゼット様の寝顔、天使みたいで。眺めるチャンスでした」

「…──っ」

「今日、町にお付き合い願えませんか?」

「町……?」

「西部をご案内させて下さい」

「…………」

 こんな、血も涙もない人間の蔓延る土地に明るくなったところで、絶望が増長するだけだ。

 リゼットは、近くて遠い故郷を思い起こす。

 違う。あすこも楽しいことはなかった。ただ優しいあの人がいてくれたから、思い入れ深くなっただけだ。
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