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引き裂かれたroyaume
第2章 踏みにじられた想い
* * * * * * *
エメは、朝早くシャンデルナの城下町を後にした。馬車に揺られて東部の町を眺めながら、西へ西へと進んでいた。
たった二ヶ月の紛争は、リステキュティージに想像以上の被害をもたらしていた。
「酷い眺めだ。復旧委員は何をしている?」
「今朝は、海外に苗木を発注しておりました」
エメの問いに答えたのは、この長旅に無理矢理同行を願い出てきたタパニ・オベール、エリシュタリヴ・オルレの隊員の一人だ。
オベールはさる貴族の次男で、年のほどは四十代半ば、ここいらではありふれた感じの紳士だ。リステキュティージの人間らしく、淡色の髪、筋肉質な肌はほとんど日焼けしていない。
「何のために苗木を?」
「ご覧の通り、草花が火薬に負けました。これでは、東部の美景が台なしです」
「後で使いを出せ。植物の心配をしている暇があるなら国民の生活を支援しろと、厳重注意だ」
「……分かりました」
「──……」
「…………」
本当に分かっているのか口先だけか、分からない。
「カントルーヴ様」
馬車が止まって二分ほど経った頃、従者が走り込んできた。