この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
引き裂かれたroyaume
第2章 踏みにじられた想い
「わたくしに許可されている道のりはここまでです。この地点で、東西の境界の通行を許可されている馬車に乗り換えていただかなくてはいけません。しかし、代わりの馬車がご用意出来ません」
「どういうこと?」
「手配いたしておりました馬車が見当たらないのです。他を当たりましたが、従者に断られました。アルフリダ・シャンデルナ様直属の軍人様を……エリシュタリヴ・オルレの隊長であらせられるお方をお乗せすることに、どの者も怖じ気づいております」
「西部にはプライベートで訪問すると、説明しろ」
「しかし、ご無礼を承知で申し上げます。貴女様に対する西部の人間の恨みは……。人間、命は惜しいもののようです」
「仇討ちに巻き込まれたくないってわけか」
「隊長、引き返すしかございませんね」
「分かった、下ろせ。歩くから」
「隊長?!」
エメは、タパニの悲鳴は聞こえない振りをして、馬車を降りる。
数十分振りに吸った外の空気は、砂っぽくて、ほんのり血生臭かった。
「いけません、危険です」
「お前は帰れ。送りの報酬も支払っておく」
「いいえ!隊長をお守りするのが我々の使命!ましてや臆病風に吹かれるなど、あるまじきことでございます」
「…………」