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引き裂かれたroyaume
第2章 踏みにじられた想い

 リゼットは、イルヴァの横顔をちらと見る。

 穏やかな碧翠の瞳が際立つ儚げな顔立ち、肩にかかる長さのブロンドの髪はそよ風を受けるとさらりと揺れる。
 イルヴァをとりまく雰囲気は、あまりに貴族的なものがある。それでいて、リネンのブラウスに細いレースのあしらってあるハーフパンツ、その活動的な装いは、やはり西部の貴族の女性らしからぬものだ。

 リゼットは、イルヴァの案内に従って、美術館に入っていった。

 壮麗な建物の中は、おごそかな空気が満ちていた。色とりどりの絵画が広々した回廊を彩っていた。

「どの絵も立体的ですね。写真を見ているみたい……それに、とても鮮やか」

「西部の伝統的なタッチです。光と影の強調、カラフルで躍動的で、リアリズムと神秘の融合……相反するものを同じ枠に描き入れることで、人間の希望が象徴されています。特に人気は、こちらの画家、マリーヌ・ラルボット」

「『転生』……」

 リゼットは、イルヴァの透明感あるソプラノに聞き入りながら、その双眸が捕らえた絵画をじっと眺める。

 七色を映した鏡が中心にあって、左右に一人ずつ、同じ顔の少女が描かれてあった。少女達は見た感じ同一人物で、色彩だけが違う。左の少女は薄紅色、右側の少女は薄紫だ。そして、右側の少女に当たった強烈な光が、左側の少女の表情をかき消す影を生んでいた。

「寂しい絵です」

「そう思いますか?」

「たった一人なんですもの。鏡のこちら側にいても、向こう側にいても、たった一人」

 まるで自分と同じではないか。

 リゼットは、『転生』と名のついた小さな世界の影の部分に目を凝らす。

 絵は、深い深い闇の所為で、奥行きがどこまであるのか分からない。

 影に隠れた少女の顔が、何故か一瞬、幸せそうに見えた。
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