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引き裂かれたroyaume
第2章 踏みにじられた想い
* * * * * * *
エメは、宿の客室を訪ねてきたジュリーに、西部の地理や政治体制を始め、この土地に関する諸々の話を聞いていた。
ジュリーの携えてきた資料の中から、新聞が投げ出されてきた。
「貴女の望んでいたものは、こういう記事でしょ」
エメが新聞を拾い上げると、今日の日付が目に飛び込んできた。
「…──!!……これ、……」
エメは、数ある記事の内一つに目を留めた。
思い当たるところのある見出し、そこに添えられた小さな写真に写っていたのは、昨日の昼間、別れたばかりの恋人だ。
否、正確には、よく似た女性の後ろ姿だ。
女性は、オリアーヌ・ヤーデルード王と思しき人物の足許にひざまずいて、言葉にするのもおぞましい行為を強いられていた。
「これは何?」
「貴女の部下。名前を伏せていたって、分かったわ。エリシュタリヴ・オルレのトップの側には、いつも良い身体をした右腕がいた。王が和睦の条件に軍人を一人迎え入れたのはニュースにもなったし、そうなれば、貴女が気がかりにしているのは、彼女しかいない。違う?」
「顔が、見えない。ジュリーさん、こんなものを見ただけで、本人とは信じられない」
エメは、胸に抱えていた空洞が、氷水を浴びせられた如くに震えているのを自覚していた。