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引き裂かれたroyaume
第2章 踏みにじられた想い
顔が伏せられていても分かる。
リテスキュティージの東西どこを探しても、これだけ絶妙なブロンドの髪の人間はいない。何よりこれほど胸がざわつく被写体は、リゼットの他にありえない。
「こんな……リゼットは、……」
「たった二ヶ月の紛争は、西部にとっても悲惨だった。家や家族をなくした人間、それに、一生後遺症と付き合っていかなくてはならない負傷者も。死者の数は、おそらく、公表されているより上回る」
「──……」
「貴女は」
エメの手から新聞が抜け出ていった。堪えていなければ今にも震える、不安を握って持ちこたえていた片手が、しっとりした手のひらに包まれた。
「この程度で済んだのだから、感謝することね」
「この程度……?」
「部下なんてまた育てれば良いんだわ。ベッドでも優秀な部下だったのなら、また──」
「彼女を侮辱するな!」
「…──っ」
エメの振り払ったジュリーの片手が、宙を舞った。
命よりも大切だった。エメは、リゼットに逢って世界が変わった。
何のために戦うか、初めて考えるようになった。自分の命より大事なものを初めて知った。
エメをとりまく小さな世界は、望めば何でも手に入った。リゼットだけが、力ずくで得てはいけなかった存在だ。
心に触れて、触れられて、二人、いつでも対等に肩を並べてきた。
「東部は、こんなことのためにリゼットを寄越したんじゃない。事実を突き止めて告訴する。タパニ!!」
「あの男なら、来ないわ」
「何だって……?あっ……」
エメの背が壁にぶつかって、左右にジュリーの腕が伸びてきた。
行く手が、遮断された。
ねっとりした色香をまとった双眸が、ふっと笑った。