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引き裂かれたroyaume
第2章 踏みにじられた想い
「飼い猫を心配してこんなところまで訪ねてきたなんて、嘘でしょう」
「怪我をしたくなければ離れろ」
「この宿も、戦の所為でめっきり客の入りが減ってしまった。優秀な従業員達も、満足な給料が出せないのでは、解雇するより他になくなって」
「あたしの所為だと言いたいわけ?」
「ただ困っているだけ。……エメ。貴女の王は、降伏した振りをして、表向き西部に油断をさせて、牙を剥く準備をされているのね。貴女はこの町の報告を持ち帰るために、この土地に遣わされてきた」
「馬鹿を言うな。……くっ」
エメの顎がジュリーの指先に持ち上げられて、二人の距離が、今にもキスしそうになる。吐息が、交じり合う。
「私は貴女を城に通報しなくては。ただの旅人ならいざ知らず、貴女は、エリシュタリヴ・オルレを統括する身。単身で乗り込んでくるなんて、他意がないとは考え難い」
「何が望みだ」
「貴女、良い顔をしている。東部の忌々しい特徴にさえ目をつむれば、声だって、この……」
身体も、と、ジュリーの指先が太ももに伸びてきた。挑発的に撫でさすられる。
「ウチは貴族のご婦人がたに評判だったの。性感マッサージを提供して、ご贔屓にしていただいていた。貴女なら、やめていった従業員達の十分すぎる代わりになるわ」
「自分が何を言ってるか、分かってる?」
「私は貧困に陥りたくない。このまま戦の痛手を負ってくずおれるくらいなら、捏造話の一つや二つ、城に寄越す覚悟でいる」