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引き裂かれたroyaume
第3章 切り裂かれた純心

 どっと疲れが押し寄せてくる。

 否、この身体の重みは、日ごとに募ってゆくばかりの罪悪感のほんの一部だ。

 エメはジュリーに、本当に退職していった従業員らの代わりをさせられていた。

 幸いこの背徳的なオプションを求めて宿泊に来る貴族は、少数だ。
 だが、名前も知らない女に触れて、その身体をほぐすためだけに、言葉にもない賛辞を浴びせる。そして体内をかき乱して、淫らに泳がせるこの作業は、確実に何かを壊されていく疼痛を伴っていた。

 タパニには町を調べさせている。リゼットに関する情報は、些細なものでも集めてくるよう命じてあった。

 二人の行動に制限はない。外出を認められているのも、おそらく、逃げ出せないと読まれているからだ。

「エメ様」

 エメが自分の客室に戻ると、扉の側に、平服姿のタパニがかしこまっていた。

「ダメでした。さっき酒場で新聞記者を自称する男と話しましたが、西部では、城での取材は、特定の記者にのみ許可されているようです。記事はヤーデルードの許可が下りなければ掲載が出来ません。また、収集した情報を外部に漏洩させた場合、処罰の恐れがあるようです」

「徹底的だな……」

「我々が城に乗り込んでは」

「無知な貴族ならともかく、城には顔が知れている」

「──……。さようの通りです」

 それは、ヤーデルードの城に直接乗り込むほど確実な方法はない。
 何せエメの目的は、リゼットがどんな苦役を強いられているか、どんな横暴に耐えているか、暴いてその証拠を掴んで、彼女を救出するところにある。

 しかし、城に堂々と乗り込めるくらいなら、今頃ジュリーに濡れ衣を着せられることを怖れて、あの悪人の言いなりになっていることはなかったものだ。

 ただ、シャンデルナ・アルフリダに願い出た休暇期間は、限りがある。

 エメは、刻限までに、リゼットのことも自分のことも、解決しなければならない。

「エメ様」

「何?」

「顔色が芳しくありません。もしや気に病まれていることでも?」

「気に病むことならいくらでもある」

「──……」

「明日は昼から聞き込みだ。あたしはまた身分を隠す。朝、お前の服を持ってこい」

「承知しました」
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