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引き裂かれたroyaume
第4章 霞んでいく過去(前)
* * * * * * *
ベネシー共和国への凱旋前夜、リゼットは、例の如くオリアーヌの私室を訪ねていた。
昼間、軍事会議でまとめてきたシナリオを、説明しておくためだ。
「ベネシー共和国は、北方を海に、南方を山に囲まれています。そしてあちら側を降伏させる際の条件として、オリアーヌ様がご所望されておいでの鉱物に富んだ島は、この諸島沖のほぼ中央です。地図の通り、この辺りの島々は、ボートで行き来が可能です。そして諜報員の話では、人の手の加わっていない無人の森がたくさんあります」
「首都は発展しているのに、国境はド田舎ね」
「はい。リテスキュティージ西部軍は、この地形を利用して、進撃します。まず、ベネシー側の兵を、この辺りまでおびき寄せます。そしてボートごと爆破させれば、一撃で乗員全員を撃ち落とせます」
「その方法、むしろベネシーが使ってくる可能性はなくって?」
「その通りです。ただ、他の隊員も、ボートは目眩ましに使えると意見が一致しました。ですから、これとは別に、……」
リゼットは、オリアーヌと並んで腰かけているソファの手前のテーブルに広げた地図の一角を指差して、説明を続ける。
「精鋭を数人選んで、このルートで、本島に攻め入らせます。ベネシー共和国首都の北北東は、農村と、軍事本部の屋敷、そして王の居城があります。ここを攻めれば、鉱物の島は傷つけないで、敵に打撃を与えられます」
「町を襲撃するの?」
「いいえ。精鋭にベネシー共和国民の衣裳を着せて、潜入させます。そして兵隊のみを狙わせます」
「面白い作戦ね。ただし、向こうは黒髪よ。衣裳だけでは欺けないわ」
「ヨーロッパから洗髪料を取り寄せてあります。あ、あの、陛下……」
「なぁに?」
「他にご質問は──…はゃっ……」
リゼットから、今度こそあられもない吐息が飛び出た。
オリアーヌの右手が、さっきから、頻りに太ももを往来している。
リゼットの厚手のロングパンツ越しに、オリアーヌの手の動き、指先の質感が、じんじん伝ってくる。