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引き裂かれたroyaume
第1章 引き裂かれた二人
「初めまして、リゼット様。今日より貴女の護衛を務めます、イルヴァ・リードホルムと申します」
リゼットは、今しがたイルヴァと名乗った女性を、幻でも見ている思いで凝視する。
イルヴァは、栗色に近いブロンドに、灰色がかった翠の双眼、西部の人間らしい特徴を備えていた。奥二重の目許に小さな鼻先、シャープな頬に薄い唇、そのかんばせはどこかきつい感じがありながら、儚げだ。背丈はリゼットと同じくらいだ。装いは、シンプルだが上質そうなシャツに、青いレジメンタルのハーフパンツというものだ。
「初めまして。……護衛って?」
「元々、私はオリアーヌ陛下の専属ガードの一人でした。しかし、リテスキュティージの西部と東部は、和解したばかりです。それも今は表面的なものでしかありません。リゼット様は、東部のエリート部隊、エリシュタリヴ・オルレのトップに次ぐ元副官。そしてこの西部には、戦争中、家や命をなくした国民が大勢います」
「私は、仇討ちの標的にされる可能性があるということですか?」
「オリアーヌ様は、東西のリテスキュティージを統一した今、近い内に海の向こう、ベネシー共和国へ勢力拡大をなさるおつもりです。そのためには、リゼット様の、東部の新鮮な力が必要です。リゼット様に刃を向けるならず者は、必ず打ち払え……と、オリアーヌ陛下より固く申しつかりました」