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引き裂かれたroyaume
第1章 引き裂かれた二人
「──……」
随分、甘く見られたものだ。
リゼットは、護身術くらい心得ていた。仮にも士官学校を首席で卒業しているし、眠っている時だって、僅かな気配を察知するくらいは容易い。
「リゼット様、ところで」
イルヴァの軽らかなソプラノが、心なしか砕けたトーンを帯びた。
「今夜は、ドレスをお召しになりませんか?まもなく、今後の作戦会議を兼ねて、西部の各部隊から有力な士官を集めた晩餐会が開かれます。リゼット様のお席が用意されています。折角の華やかな場ですから」
「ドレスは、持ってきてないんだけど」
そんな浮かれたものを所有したところで、きっと惨めになるだけだった。
リゼットは、それでこの十九年の人生の中、髪の結い方も研究した試しはなかった。
「分かりました」
「──……」
「私のドレスをお貸しします。美しい、リゼット様のブロンドも……、お任せ下さい」
「えっ……」
リゼットの色素の強いホワイトブロンドの髪が、イルヴァの指先から滑っていった。
リゼットは、改めて見る翠の双眸の透明感から、不覚にも、昼間、やはりこんな風に髪に触れてきた女性のそれを彷彿とした。