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引き裂かれたroyaume
第4章 霞んでいく過去(前)

「エリシュタリヴ・オルレには、独自の訓練法があった。完璧な人材だけが集められたあの軍隊に、勝敗を五感に左右される概念はなかった」

「──……」

「尊敬していた上司に教えられたの。戦いのプロに敗けはない。自ら犠牲になるべきでもないって。個別特訓で、私、両腕に打撲を負わされたことがあるの。それで手合わせしたわ。結果は引き分け。手加減してくれたんじゃないかって、ちょっと今でも疑っている。後日、今度は私があの人に同じことをした」

「襲撃が来たらどうするわけ?」

「特訓は個人レベルに合わせたものだし、全員が一斉にするわけじゃない。……でも、きっと、あの人は急な襲撃が来たって動じなかったでしょう。私、あの綺麗な手を、とてもぶてなかったから」

「──……」

「絶対に安全だと教えられた場所に、矢を放った。他の隊員にさせるくらいなら私が、って、腹をくくった。その時は、私が負けたわ」

「上司って、恋人でしょ」

「…………」

「ベッドでは優しかったか知らないけど、昼間はスパルタの非道じゃん」

「ふふっ、そうね」

 でも、と、リゼットはイルヴァの伸びてきた片手を握った。

「あの東西の戦いで、私は無傷でいられたわ。エメは、私に、かすり傷一つ負わせなかった。ずっと側にいてくれた。そして……、今日だって、あの人が鍛えてくれていたお陰で、耐えられた」

「──……」
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