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引き裂かれたroyaume
第5章 霞んでいく過去(後)
「あの島は、戦を招く島なんですか?」
「ただ、王とわたくしの考えを、貴女にお話しただけのこと。それでね、リゼット」
「はい」
「実は、島をどうするか、わたくしに決定権が委ねられたの。王は、あげてしまって構わないと仰った。ただし、無償であの島を譲渡すれば、ベネシー共和国は今後、他国に甘く見られる。困ったところね」
サリアの綻びやすい唇から、くすくすと軽らかな声が立つ。
「リゼットは、あの島、欲しい?」
「あの島を持ち帰ることが、私の任務ですから」
「それなら話は早いわ。わたくしに、島が欲しいとお願いなさい?リゼット」
「え……」
「言ったでしょう?無償で島を渡しては、国の面目が立たないと。だから、わたくしがあの島を手放すには、リテスキュティージの軍人にせがまれたという理由が必要なの。さぁ、リゼット。わたくしに頼んで」
「──……」
サリアは、正気か?否、リゼット自身、サリアの何らかの謎かけの意味を解けていない?
「サリア王妃……鉱物の島を……」
下さい、と、リゼットが続けかけたやにわ、サリアがすっくと腰を上げた。
長い黒髪が、黒いドレスにさらりとまとわりつきかけて、宙を舞ってやがてすとんと流れていった。
サリアが進み寄ってきた。
「…──っ?!」
サリアの腕が伸びてきて、胸ぐらを掴み上げられた。
リゼットの腰が宙に浮く。
そして、サリアの懐から出てきた短剣が、突きつけられてきた。