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引き裂かれたroyaume
第5章 霞んでいく過去(後)
* * * * * * *
密室に、鞭が宙を切り裂く音と、血肉をくるんだ皮膚を打つ音が響いていた。
ほんのり血の匂いがするのは、体内で出血しているそれが、鼻孔に染みてくるからか。
リゼットは、部屋の片隅で膝立ちになって、両手首を枷で吊り上げられていた。ピアスで飾った生身の裸体を、サリアに仕える女性に鞭打たれるためだ。
「ぁああああっ!!はぁっ、あっああっ……!!」
女性の振るう鞭の力は、その反動からして生半可なものではない。肩が打たれれば乳房が揺れて、背中が打たれれば太ももがひくつく。
どれだけ痛みを訴えても、許しを請っても、無駄だった。
もとよりこの責め苦から逃れられる選択肢はなかった。
リゼットの滲んだ視界の隅にちらつく身体のあちこちに、鞭の赤黒いみみず跡が蔓延っていた。
「もう良いわ。お下がり」
サリアの合図がかかってきた。
リゼットは、鞭を携えている女性とは別の女性に、手首の枷を外される。
「うっ……うぅ……あぁっ」
リゼットの身体が、糸の切れたマリオネットよろしく床にくずおれて転がった。
サリアがしゃがみこんできた。ドレスの裾が、ふわりと、床に広がった。
「リゼット……これで取引は成立よ」
頬に指が伸びてきて、そっと右手に包み込まれる。
「今のはビデオテープに録画したわ。泣けるわね。戦勝国の捕虜が、新たな主の欲するもののために、身を呈して懇願するの。五十発の鞭に耐えきった誠意に敬意を表するわ。約束通り、島をあげる」
「はぁっ、そ……そこ……」
ダメ、と、リゼットはサリアの左手をちら見する。
空気にすら染みる傷に、サリアの指先に滲んだ汗の酸は、あまりに刺激が強すぎる。
「……さて、貴女の手当てをしてあげなくては」
サリアが、さっきリゼットから手枷を外した女性から、何やら瓶を受け取った。
リゼットの身体に、瓶の中身を掬ったサリアの指先が、近づいてくる。
患部がじんと甘く疼いた。
「ぁっ、あん……はぁっ……」
「あら、素敵な声。丸裸にされて鞭で打たれて、興奮したのね?その上ビデオに記録されるなんて、趣味と実益を兼ねたひと仕事だったでしょう」
「違い、ます……ああっ!!……いや、そ……あん、その薬……」
「薬が何?わたくしは手当てをしてあげているの。さぁ、リゼット」