この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
引き裂かれたroyaume
第5章 霞んでいく過去(後)

「服、着せないのは、薬を馴染ませるためだから」

「……それ、だけ?」

「それだけ。ほんとに傷に障るから」

「…………」

 リゼットは、膨らんでゆく悲しみを飲み込んで、拳を握る。

 泣いて鳴いて、とても酷いことをされたいのに、今朝に限ってお預けか。

「……リゼット」

「なぁに?」

「私の言ったこと、真に受けちゃダメだよ。……リゼットは、女に囲われて幸せになれるような、か弱いお嬢様じゃない。大好きな人とは、支え合って、自分の力で立っていられるお姫様」

「何、言い出すの……急に。私に大好きな人なんて──…」

「悔しかった」

「…………」

「リゼットが強くなれたのも、綺麗なのも、まっすぐなのも、全部、東部にいるあの人と一緒にいたからなんだって思うと、悔しかった。だって私は、東西のあの戦いで、貴女をずっと見ていたから。ずっと見ていて、惹かれていたから」

「…──!!」

「こっそり覗いていた戦場で、貴女だけ、欲しいと思った。あんな生き生きした顔をさせられるのも、守れるのも、何で私じゃないんだろうって、……敵に対してこんな風に思ってたなんて、陛下に知られていたら、謀反で叱られていたかな」

 イルヴァの穏やかなソプラノに、笑可しそうなトーンが混ざった。

 リゼットは、首を回してイルヴァに振り向く。

 吸い込まれそうな碧眼は、さしずめブルートパーズだ。たおやかで、優しげで、瑞々しい気品に満ちた面立ちは、まるでずっと眺めていたいガラス細工だ。

「──……」

「ん……」

 二人の唇が、どちらからともなく重なった。

 角度を変えながら、恋を覚えたばかりの少女みたいな口づけを交わして、次第に貪欲になってゆく。
/136ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ