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引き裂かれたroyaume
第5章 霞んでいく過去(後)
「ああっ、あん、あっああっ……」
「リゼット……痛い?苦しい?」
「ええっ……ぁっ、痛くてっ……あっ、あんっ
……」
「そう。……貴女は残酷な人だ。大好き。リゼット……もっと、もっと、救ってあげる」
「っ……!!」
首筋に歯を立てられて、無傷だった皮膚を抉られる。
ひりひりした痛みに顫え始めるそこが、舌先で撫でられていく。
「あっ、……」
「ねぇ、リゼット?私、貴女に話してなかったことが、まだたくさんあるんだよ」
「んっ、あっ、はぁっん……」
「私、一度だってリゼットをオリアーヌ陛下の所有物として見たことない。貴女は誰の持ち物でもない。ただ、貴女は私の……」
軽らかなソプラノが、何か打ち明けかけたその時だ。
「…──!!」
リゼットは、イルヴァにすかさず血の乾いたシャツでくるまれる。
天幕の開く音のした方を振り向くと、そこに、近くで休んでいたはずの隊員の一人がいた。
「あ……ああ……」
「イルヴァ様……この娘とは……」
「誤解だ、リゼットが怪我して、薬を塗って」
隊員の唇がにやりと歪んだ。
そのぎらぎらした眼差しの先に、たった今までリゼットを顫わせていたイルヴァの濡れた指先があった。
「そういうことか」
「…………」
「リゼット。お前は、イルヴァ様までたぶらかした。島はその巧みな身体で得たそうだな……だが、それが埋め合わせになると思うな」
「口を慎め!リゼットは、あんた達が不甲斐ないために──」
「イルヴァっ……」
リゼットは、隊員の憎悪に燃えた眼光に射抜かれたようにして、イルヴァの胸に崩れ落ちた。