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引き裂かれたroyaume
第6章 壊された記憶

「…………」

「──……。リゼット。私達も、戻ろっか。立てる?」

「…………」

「……リゼット?」

 リゼットは伸びてきたイルヴァの片手を掴まえて、ぎゅっと握った。

 今度こそ、目覚めたくなかった。帰ってきたくなんてなかった。

 イルヴァの捕まえなかった方の手が、ぽん、と、頭を撫でてきた。

 くすっ、と、優しい笑い声が間近でこぼれた。

「またホームシック?」

「そんなんじゃ……」

「ごめんね、夢の中で素敵な思い出に浸ってるとこ、邪魔をして」

「かっ、からかないで!」

「図星だったんだ」

「…………」

 違う。否、図星だが、そうではない。

「今朝の男が陛下に何かバラすって?リゼット、陛下をよく思わないのは自由だけど、そこは見くびるところじゃないよ」

「そうね。イルヴァは、西部の生まれの西部育ちだわ。陛下が悪いようになさるはず、なかったわね」

 冷静になってみて、思い直す。

 何も心配することはない。

 リゼットとイルヴァの関係が、オリアーヌに知らされたとする。さすれば責任を問われるのは、リゼット一人だ。

「リゼット」

「な、に……?」

「やっぱり、良い」

「…………」

 リゼットは、イルヴァからそっと手を離して、潮を含んだそよ風の中、今度こそ船を降りていった。
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