この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
引き裂かれたroyaume
第6章 壊された記憶
「…………」
「──……。リゼット。私達も、戻ろっか。立てる?」
「…………」
「……リゼット?」
リゼットは伸びてきたイルヴァの片手を掴まえて、ぎゅっと握った。
今度こそ、目覚めたくなかった。帰ってきたくなんてなかった。
イルヴァの捕まえなかった方の手が、ぽん、と、頭を撫でてきた。
くすっ、と、優しい笑い声が間近でこぼれた。
「またホームシック?」
「そんなんじゃ……」
「ごめんね、夢の中で素敵な思い出に浸ってるとこ、邪魔をして」
「かっ、からかないで!」
「図星だったんだ」
「…………」
違う。否、図星だが、そうではない。
「今朝の男が陛下に何かバラすって?リゼット、陛下をよく思わないのは自由だけど、そこは見くびるところじゃないよ」
「そうね。イルヴァは、西部の生まれの西部育ちだわ。陛下が悪いようになさるはず、なかったわね」
冷静になってみて、思い直す。
何も心配することはない。
リゼットとイルヴァの関係が、オリアーヌに知らされたとする。さすれば責任を問われるのは、リゼット一人だ。
「リゼット」
「な、に……?」
「やっぱり、良い」
「…………」
リゼットは、イルヴァからそっと手を離して、潮を含んだそよ風の中、今度こそ船を降りていった。