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引き裂かれたroyaume
第6章 壊された記憶
* * * * * * *
リゼットは、城の離れの屋敷に帰ってものの一時間と経たない内に、城の中枢の広間に呼ばれた。イルヴァも一緒だ。
広間は、音楽会でも催せようほどの広さがあって、あらゆる贅が尽くしてあった。
オリアーヌは、最奥の椅子に腰かけていた。そして、見知った数人のメイド達が、その左右に侍っていた。
リゼットは広間に入るなり、イルヴァと引き離された。そしてオリアーヌに招かれた。
二日振りにまみえる主に向かってひざまずく。
イルヴァの方は、メイド達の最後尾にかしこまっていた。
「…………」
「此度の戦、ご苦労様。二日でかたをつけるなんて、私はお前を見直したわ」
「お誉めのお言葉、光栄です」
「もっとも」
オリアーヌの腰を上げた気配がした。
いやな衣擦れの音が近づいてくる。
視界に淡い影が落ちてきた。嗅ぎ慣れたオードトワレの香りが鼻を掠めた。
「…………」
「お前に関する良からぬ報告を受けたの。お前、心当たりはあって?」
「何のことですか?」
「お前が私のために他国の王妃の玩具になるのは結構。さて、さすればお前が私の家臣と寝ていたのが事実なら、それは私にとってどんな利益があるのかしら?」
「…………」
「レッシェル」
リゼットがちらと視線を上げると、オリアーヌのぎらつく眼光が、メイドの一人に合図を送った。
「この捕虜を処刑場へ。気を失わない程度に皮膚を剥いで、熱湯を浴びせるよう命じなさい」
「陛下。おそれながら承服致しかねます。いくら捕虜でも、裁判もなさらないでそのような処置をなさっては、陛下に対する国民の信頼問題に関わります」
「レッシェル。王の持ち物に手を出そうとは重罪。王の持ち物がその意思に背くなど、命の価値を放棄したのも同然。裁判するまでもないでしょう」
「…──っ、ですが……」
「リゼット」
「──……。うっ、……」
「リゼット!」
手の甲にピンヒールがねじ込まれてきた。
一昨日の夜、ピアッシングニードルで抉られた場所だ。