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引き裂かれたroyaume
第6章 壊された記憶

「いやぁああっ!!ダメっ!!私が……私が……いやぁああああっ……!!」

「リゼット!」

 リゼットは、レッシェルにとり押さえられながら、暴れもがく。

 身体中が氷水を浴びたみたいに凍りつく恐怖に侵されているのに、過剰な汗をかいていた。

 突然、視界が真っ赤に染まっていった。

 否、赤く色づいたのはほんの一部だ。それが禍々しいほど鮮やかで、世界の全てが鮮血に染まった錯覚をいざなわれたのだ。

 イルヴァにねじ込まれた塩の塊の先端が、オリアーヌの右手ごと、その蜜壺から流れた血液の色に濡れていた。

「うっ、ぁ……、ん……はぁっ、……ああっ!!」

 オリアーヌの右手が動き出す。苦しげに細くなる双眸が、儚げに喘ぐ唇が、扇情的な苦悶に歪めば歪むほど、血をしたたらせる膣をかき乱す手が残酷になる。

「あ……ああ……うっ、ぐぅ……」

「滑稽なものね。少し前まで一国の王の寵姫と謳われていた女が……罪人として見世物になっているなんて。いかれた訓練を受けてきたリゼットならまだしも、貴女は痛みに全く免疫なんてないはず。それで気絶も狂いもしないなんて、称賛するわ」

「あぅっ」

 がん、と、また、オリアーヌの握った拷問具が、イルヴァの腹の奥を突いた。

「も、やめ……て……私が、悪いから……ぐすっ、やめ……」

 血の量が、異常だ。

 数週間前、リゼットが、あのカフェでイルヴァに奥まで突かれた時も、あれだけの出血はなかった。

「あら、強情なお姫様が初めて私の前で泣いたわ」

「リゼットの……はぁっ、あんたに……リゼットをとやかく言う資格はない……ああっ!!」

「陛下!やめて下さい!!私なら、……私なら耐えられます!陛下の気が済むまで私が……っ」

「失礼します。陛下」

 やにわに広間の扉から、官吏が一人、入ってきた。その腕に、何やら奇妙なものが抱かれてあった。

「申しつかっていたものの準備が整いました」

「そこに置いて。……二つ?」

「罪人は二人、と、聞いておりましたので」

「そう。良いわ。お下がりなさい」

 官吏が恭しく頭を下げて、扉の向こうへ戻っていった。
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