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引き裂かれたroyaume
第6章 壊された記憶

 イルヴァから、粗塩の塊が引き抜かれていった。

 オリアーヌに呼ばれたメイドが、小さくなって真っ赤に染まったそれを受け取って、下がっていった。

「──……」

「烙印が、二人分届いたんですって」

「っ……!!」

「イルヴァ。もう一度訊くわ。さっきから馬鹿みたいに騒ぎ立てているあの娘……。私は、あれの言葉を信じるべき?」

「──……。いいえ。リゼットは、私を庇おうとしているだけです。でも、……陛下」

「…………」

「リゼットは誇りある軍人です。彼女が鍛えられたエリシュタリヴ・オルレは、私達にとって敵ですが……蔑むべきではありません」

「リゼットにたぶらかされて、愛国心までなくしたの?」

「リゼットは、命懸けで生きてきました。決死の覚悟で戦っています。西部に来た時も、……逃げ道はありませんでした。たった一人、誰も知らない土地に来て、それでも貴女のために戦うつもりでいました。私も、こうなることは覚悟して、リゼットの側にいようと決めました。それで私が陛下の逆鱗に触れたとしても、私のために陛下を非難する人はいません。親が担保をなくすだけです。どうせどこかで待ってくれている人なんて、いません……それなら私は、私の選んだ人のために」

「…──っ」

「一つのものを貫くために、守るためには、生半可な気持ちでは出来ません。自分の持ちうるものの一つや二つ、諦めてでも大事に思えるものを、リゼットは、持ってます。陛下も……、陛下にも、まだ、そういうものがあるなら……なくても、彼女を、誇りある軍人として扱って下さい」

「──……」

「……この私に説教とは」

「──……」

「…………」

 オリアーヌが腰を上げた。

 無言の威厳をまとった王が、焔を吸った二つの金属が預けてあるテーブルへ向かう。

「陛下っ、ダメ……やめて下さい……やぁ……ダメえぇっ……」

「…………。……リゼット」

「っ……」
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