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キャンドルが消える時
第1章 プロローグ
「バカ野郎! 前にも教えただろ!」

つむじを見せるくらいに頭を低くして、支店長のお怒りが治まるのを待った。営業の仕事に就いてもう二年も経ったけれど、私のミスは減るどころか増えるばかりで、朝、出勤して怒られ、営業から帰ってきて怒られ、いい加減、気が滅入ってきたところだ。上手くなっていくのは支店長のお怒りが早く終わるように反省したフリと、お礼だけ。

「申し訳ありません」

「どうするんだ! 申し訳ありませんで済むことじゃないんだ」

そんなこと言われても。

盗み見た支店長の顔は鬼のようで、朝から元気だな、と目線を再び下に向ける。こんなに怒りながらも支店長が直々に謝って万事解決というのがいつもの流れだ。きっと、申し訳ありません、って謝る。私の申し訳ありませんと、支店長の申し訳ありませんは、やっぱり重みが違うのだろう。

「……はぁ、今日中にアポをとっておけ。日時が分かったら連絡しろ」

「かしこまりました」

元々は私のミスじゃないのに。

「すみません、俺のせいで」

「今度は気を付けてね」

申し訳なさそうに頭を下げる南君は、新入社員ということや支店長のお気に入りということなどから、責任を取らされることがほとんどない。顔がいい人は、人生まで上手くいくものだから世の中は本当に平等じゃない。

先方へ電話をかけて約束を取りつけ、支店長にメモを渡す。

「午後にはここを出る」

「はい」



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